蜃気楼のように何もなかったはずの場所に突如出現する何か。
城、塔、遺跡、街……形を変えて気まぐれに現れては消える。
それが出現した地では人が神隠しにあうらしい…。
ある人はとてつもない財宝があると言い、
ある人は魔女のいたずらだと言い、
またある人は悪魔の棲家だと言った。
程なくしてそれはリリスの宮殿と呼ばれるようになり、
多くの者は不気味がり近づこうとはしなかったが
探究心の強い者、根のない財宝の噂を信じた者、
僅かな者が捜し求めるようになった。
噂を聞きつけ辿り着いた頃にはすでに跡形もなく消えていて、
大半の者が徒労に終わったらしいが
ごく僅かな者は中に入ることができたらしい…
だが突如出現する「それ」の真実は未だ憶測の域を出ない。
中に入る事ができたと噂される者は、
みな行方が分からなくなった者の事であるから…